小児の近視進行抑制治療
- 近視
- 近視はどうして起きる?
- 近視進行のメカニズム
- 近視進行抑制治療
- 低濃度アトロピン点眼治療
- 0.025%アトロピン点眼薬
- 0.025%アトロピン点眼
治療の流れ - 0.025%アトロピン点眼
治療の費用
近視
近視(Myopia)とは、「眼球の形が前後方向に長くなって、目の中に入った光線がピントが合う位置が網膜より前になっている状態(軸性近視)」を言います。
近くの物体を見るときにはピントが合いますが、遠くの物体はピントが合わずぼやけて見えるようになります。
近視が強い人は、物を近づけてみることになります。

目の中に入った光線がピントが合う位置が網膜より手前になっています。
近視はどうして起きる?
遺伝的要因
アジア人には近視が多い。
両親とも近視でない子どもに比べて、片親が近視の場合は2倍、両親が近視の場合には約5倍の確率で子どもも近視になりやすい。
環境要因
水晶体が濁り、光がうまく通過できなくなります。
光が乱反射して網膜に鮮明な像が結べなくなります。
両者の要因が考えられるがはっきりした関係は不明。
近視進行のメカニズム
環境要因で近視が進行する機序として、以下の3つの仮説が立てられています。
- 軸外収差理論
- 調節ラグ理論
- 機械的緊張理論
①軸外収差理論
周辺部のぼやけ(赤矢印)をなくそうと眼球が伸びるため近視が進行するという理論。

黄斑部に焦点が合っていても周辺部にはピントが合っていないと、周辺部の焦点を合わせようと眼球が伸びるため、近視が進行する。
②調節ラグ理論
調節…近くを見る時に目の中で力をかけなければならず、その力がかかることにより近方へピントを合わせます。
正視(近視・遠視がない状態)の場合、遠方を見ているときは網膜上にピントが合っています。![]()
5m程度までは、網膜上にピントが合っています。
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近くのものを見るときに調節が働かないとピントは網膜の後ろにずれ、目の中で力がかかることにより近方へピントを合わせます。
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そのため、より近くを見ようとする時、ピントを合わせる力(調節力)はさらに必要になります。
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調節ラグとは近距離を見ようとするほど調節反応が鈍り、次第に焦点は網膜の後方へずれていくことをいいます。
通常は、目の焦点深度(ピントが合う範囲)によって調節ラグによるぼやけは自覚されません。
ところが、この調節ラグが長時間続くと、その誤差に順応するように眼軸長が伸びる、そのため近視が進行する、とする理論です。![]()
度の強い眼鏡を掛けて手元を見続けると近視が進行するのは、調節ラグが働くからと言われています。
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※強すぎる眼鏡を掛けると目がドンドン悪くなるという理由の1つです。
③機械的緊張理論
近くを見る時に水晶体に力が加わり調節を行います。その際に眼球赤道方向に掛かる機械的緊張が加わります。
調節により眼球に機械的緊張が掛かると、眼球赤道方向の成長は抑制されますが、眼球の前後方向には成長が促進されて眼軸が伸長するため、近視が進行するとする理論です。
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近視進行抑制治療
調節麻痺点眼治療
①トロピカミド ネオスチグミン
調節麻痺による視力低下の方に、トロピカミド点眼、ネオスチグミン点眼を処方します。
保険診療での処方が可能ですが、しばらく点眼しても効果がない場合は眼鏡処方を考慮します。保険診療可 ~3か月で効果なければ眼鏡を考慮。
②シクロペントレート、アトロピン
近視抑制効果があるとされる成分ですが、本来は診断用に使用する薬剤です。
散瞳持続効果が長くまぶしい等の副作用があるため、治療用としては当院では処方いたしません。本来は診断のために使用します。
散瞳持続時間が長いため羞明(まぶしい)等の副作用が強く、当院では処方しません。
眼鏡・コンタクトレンズ
①二重焦点眼鏡
遠視性ボケ・調節ラグの改善により近視進行の抑制につながります。
処方希望の方はご相談ください。
②多焦点コンタクトレンズ
コンタクトレンズの中には近視抑制効果のあるレンズがあります。現在(2025年6月)日本で正式に承認されたコンタクトレンズはありませんが、デザインが同じレンズの取り扱いはあります。
ご興味のある方はご相談ください。
新しい近視進行抑制治療
①低濃度アトロピン点眼
低濃度のため1%アトロピンと比して副作用がほとんどありません。
②オルソケラトロジー
夜間コンタクトレンズを装着、日中は裸眼で過ごすことができます。
詳細はオルソケラトロジーの項を参照して下さい。
低濃度アトロピン点眼治療
1%アトロピン点眼薬は近視抑制に効果がありましたが、毛様体筋麻痺や散瞳等、視力に関わる副作用が確認されています。
低濃度のアトロピンを濃度を変えて(0.1, 0.05, 0.01%)処方したところ、0.01%配合させた点眼薬は他の濃度と遜色ない結果を得られました。
5年間の観察で、治療を中断した時の近視へのリバウンドが大きかった濃度は、1>0.1>0.05>0.01% でした。
0.01%アトロピン点眼は、他の濃度の点眼薬と比較して副作用が低く、かつ近視を抑制する効能を保持しています。
当初はシンガポールの発表に基づいたものでしたが、日本でも治験が行われて0.025%, 0.01%アトロピン点眼は、日本人の小中学生の近視に対して有効性と安全性が確認されています。
0.025%アトロピン点眼薬
当院では、アトロピンというお薬を1日1回点眼することによって近視の進行を抑制する治療を行っています。
治療には低濃度アトロピンを使用します。
2025年4月21日に、子どもの近視の進行を抑制する点眼「リジュセア®ミニ点眼薬0.025%」が発売されました。リジュセア®ミニ点眼薬は、参天製薬がシンガポールの国立眼科・視覚研究所であるシンガポールアイリサーチインスティテュート(SERI)と共同開発した、アトロピンを0.025%含有した点眼薬です。以前当院で採用していたマイオピン™と同じ低濃度アトロピン製剤であり、近視の進行抑制を効能・効果としています。

防腐剤を含まない1回使い切りタイプの点眼薬となります。アトロピンの作用機序は眼軸進展作用のあるムスカリン受容体直接ブロックするためと考えられています。
本剤は近視進行抑制剤であり、近視を改善するものではありません。本剤に視力矯正機能はないため、近視の進行状況に応じて眼鏡等での視力矯正が別途必要です。薬剤の効果により日中の光のまぶしさ、かすみを感じることがあります。
近視が著しく進行する小児期に速やかに開始することが重要です。
治療開始後は治療効果および安全性の確認のため定期的に受診をお願いします。
0.025%アトロピン点眼治療の流れ
初回診療
検査と説明を行います。
治療に承諾いただいてから0.025%アトロピン点眼薬(1箱)を処方いたします。注意:完全自費診療のため、保険診療を行った日は処方できません。
別の日にお越しいただき処方させていただきます。
1週目検査
1週~1か月までに検査・診察に来院。ご継続の意思を確認。
定期検査
以後、3か月毎の受診をお願いします。
治療は近視の進行が安定化する10代後半まで継続することが望ましいと考えます。
0.025%アトロピン点眼治療の費用
0.025%アトロピン点眼薬 (リジュセア®ミニ点眼液) |
4,000円(1箱30本入)(税込) 1回につき処方できる点眼液は3箱までです。 |
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検査・診察費用 | 2,000円(1回)(税込) 点眼液の処方には、検査・診察が必要です。 |
バリューパック | 13,000円(税込) 点眼液3箱と検査・診察費用が含まれたお得なセットです。 |
0.025%アトロピン点眼治療 近視進行抑制治療に関してお気軽にお問い合わせください。